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保育業界でも進むICT化(情報通信技術)

近年よく耳にするICT化とは

近年、耳にする機会が増えているICTとは・・・
Information and Communication Technology(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)の略であり、日本語では一般に”情報通信技術”と訳されます。
ICTとほぼ同じ意味を表す言葉にIT(コンピュータやインターネット技術の総称)がありますが、
ITが経済の分野で使われることが多いのに比べ、ICTは主に公共事業の分野で使われることが多いです。
なぜかというと、ITとは経済産業省の用いる用語であるのに対して、ICTは総務省の用いる用語だからです。
ICTの教育現場への導入事例としては、パソコンの導入はもちろんのこと、電子黒板・DVD動画・プレゼンテーションソフト(Power Point)などを活用することで、グラフや資料を効果的に使用して授業の効率化を図っています。

一方、保育の現場では、今まで手作業で行っていた業務を専用のシステムやアプリケーションを導入することで、作業時間の短縮や業務の効率化を図っています。
最近では、人工知能(AI)を活用した児童見守りロボットの導入などICT化は更なる進化をし続けています。

人材不足を背景に厚生労働省が保育所のICT化を推進

厚生労働省は子育て支援政策の一環として、平成27年に「保育所等における業務効率化推進事業」を新たに創設しました。この事業により、保育園は事業の効率化に役立つICTシステムの導入の際に、最大100万円の補助金を受けることができるようになりました。
そもそも、なぜ厚生労働省が保育所のICT化を推進するようになったのでしょうか。
その背景には、保育所の人材不足が大きく関わっています。
現在、保育士の資格を保有している人材が全国で約120万人もいる一方で、保育の仕事に就いていない
潜在保育士の数は約80万人にのぼると言われています。
また、どういったことが整えば保育士として再び働きたいかという質問に対して、「給与・賞与等の改善」「職員数の増量」「事務・雑務の軽減」が求められていることが平成27年に厚生労働省が公表した「保育士等に関する関係資料」にて明らかになっています。
そのような背景から「保育現場の業務の負担軽減」「安全な園内環境整備」を目的として保育所のICT化を推進しているといえるでしょう。

ICT化を進めている保育事業主の目的

実際に保育現場にICT化を導入するとなると保育事業主は、補助金があるとはいえ多くの導入費用や園にインターネット回線やパソコン、タブレットなどの通信環境など様々な準備が必要となります。
それでもICT化を進める法人が出てきています。その目的は何かというと、やはり前述のとおり「人材不足からの脱却」です。
その為の手段として、ICTシステムの導入で保育者の業務を軽減し、より働きやすい職場環境づくりをする事で、保育の質の向上や離職率の低下を図り結果として、人材不足からの脱却に繋がっていきます。
具体的にどんなICTシステムが導入されているか、事例をご紹介します。

・保育料の自動請求システム
 タッチパネルやICカードを利用して保護者が登園・降園時間の打刻ができ、園児ごとに異なる保育料や延長保育料の自動計算ができます。保護者による誤った時間申告の防止、正確な保育時間の反映や手計算による請求金額ミスの防止も図れます。
 最近では、システムから直接請求依頼まで行えるものもあります。

・保護者向けの連絡アプリ
 欠席や延長保育の連絡をiPadなどのアプリ上で行うことで、電話での連絡が不要となり保護者・園ともに忙しい時間帯の負担を軽減する事ができます。

・書類作成システム
 保育指導案や日誌、保護者へのおたよりなどを作成できるシステムです。
 作成する際、文例や入力用の雛型を利用できるものもあるので、文章作成の時間短縮や過去のデータを参照しながら作成することができるので、一貫性のある指導案の作成も可能です。システムによっては、保護者へのおたよりなどWeb上で配信もできる為、印刷する時間も削減できます。

・写真販売システム
 園内の生活の様子を写真販売するケースがありますが、その多くは撮影・印刷・掲示、保護者への販売管理などを保育士が行っており、かなりの作業時間を要します。
 システム化することで、撮影した写真のデータを専用のサイトに転送(アップロード)し、保護者はサイト上で好きな写真を選び購入・支払することができるようになり保育士の作業時間を大幅に軽減できます。
 最近では、ロボットが撮影し専用サイトに転送できるものも導入されており更に進化を遂げています。

このように保育士の業務を軽減する様々なICTシステムが新しく作られ保育の現場に導入されていっています。

ICT化が進む保育園で働く現役保育士の反応

ICT化すると負担が軽くなるようですが、実際にICTシステムが導入されている園で働く保育士はどのように思っているのかについて現場保育士の反応をお伝えしていきたいと思います。

■不便だと感じる点
 ・操作を覚えるまで時間がかかることがある。
 ・パソコンやタブレット端末の台数が少なく手が空いた時間に作業ができないことがあった。
 ・ICTシステム導入後の研修が不十分。
 ・インターネットの通信状況が悪く作業に時間がかかる。
 ・システムに不具合がでることがある。

■便利だと感じる点
 ・手書きでの書類作成業務が減った。
 ・情報の内容や書式が統一され管理や検索がしやすくなった。
 ・計算業務が自動でできるようになり作業時間が減った。
 ・登園降園の時間帯の電話対応が減り、保護者や園児と会話が増えた。
 ・保育士同士での情報共有が簡単にできるようになった。

現時点で、不便に感じるという意見もまだあるようですね。
これらの意見をもとに、通信環境やパソコンやタブレット端末の整備、ICTシステム導入後の研修を充実させるなどの改善が行われています。
改善点が進んでいけば、ICT化は業務の大幅な軽減ができる優れものといえるでしょう。

加速が予想されるICT化

日々進化しているICT化ですが、今後も更なる進化が期待されています。
現状の改善はもちろんのこと、AI(人工知能)技術の発達に伴い新たに様々なサービスが生まれてくることが予測されます。
例えば、園児の安全を見守るロボットの進化系で顔認証を搭載し、園外活動時などに一定の距離から離れた際に保育者に知らせるアラーム機能やWebサービスを活用した研修の実施など。
ICT化が進むことで、保育者の業務負担の軽減が実現・浸透していけば「保育士=大変な仕事」というイメージから「保育士=就きたい仕事」イメージに転換していくことで、潜在保育士の職場復帰・保育士を目指す学生の増加に繋がれば保育士不足からの脱却が実現する日が来るのではないでしょうか。

転職活動の際には、希望する園がどのようにICT化に取り組んでいるかという点もふまえて活動すると、新しい視点で転職先を探すことができますね。ぜひ面接の際には採用担当者に質問してみましょう。